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掲載開始日 2020年12月17日

【重版決定!】現実を遠く見はるかす物語に、各界から絶賛の声、続々! 太田愛『彼らは世界にはなればなれに立っている』




株式会社KADOKAWA(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:松原眞樹)が2020年10月30日に発売した、太田愛の最新小説『彼らは世界にはなればなれに立っている』。発売から一ヶ月、数々の絶賛の声に押され、重版が決定しました!〈はじまりの町〉と呼ばれる架空の町が舞台の本書は、ファンタジー、サスペンス、ミステリ、青春小説……と多様な要素を持った、ジャンルを横断したエンターテインメント作品です。

<絶賛の声続々!>
「いまどうしても書かなければならなかった」という決意のもとに書かれたこの小説に寄せられた声を、ご紹介いたします。



【寓話でありながら、現実。「始まりの町」はここにある】

●本田由紀さん(社会学者・東京大学教授)
この寓話のようなファンタジーを著者が書いた、書かねばならなかった理由に、思いを馳せることになるだろう。どこにもない「塔の地」「始まりの町」はここにある。トゥーレもマリもあなただ。それに気づこう、という著者の囁きが、耳をよぎる。
(朝日新聞 2020年12月5日掲載 書評より抜粋)

●関口苑生さん(書評家)
物語は、4人の人物が、自分たちを取り巻く状況、町で起きる不穏な事件の数々を、それぞれの立場から順に語り継いでいくことで進行する。そこから次第に町の、というよりこの世界の姿が、一枚ずつベールを剥ぐように明らかになっていく。
これが問答無用で怖い。じわじわと、音もなく迫ってくる、えたいのしれない恐怖が身内に湧きあがってくるのだ。
それは例えていうと、悪と悪意の塊である。個人のものから始まって、次第に組織、国家へと広がる民意と称される悪の連鎖と塊だ。しかもこの悪意は意思をもって進化する。心ある人々の善意に呼応するように、悪意もまたきな臭い雰囲気を漂わせながら成長していく。そんな「現実」がここにある。
(産経新聞 2020年12月6日掲載 書評より抜粋)

●鴻巣友季子さん(翻訳家)
これは、過去でも未来でもない『今』だ。目の前にあるのにあなたが見ようとしない現実だ。

●町山智浩さん(映画評論家、翻訳家)
選挙をやめ、報道をやめ、流民を虐げ、過去を賛美する、どこかの国の悲しいおとぎ話。いや、どこかの国ではないかもしれない……。


【生きることの切なさ、人間の切なさ。その先にある「福音」】

●金原瑞人さん(翻訳家・法政大学教授)
カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を思い出した。あれはディストピア小説ではなく、ディストピアを舞台にした、生きることの切なさを描いた作品だった。そして、『彼らは世界にはなればなれに立っている』も絶望の町を舞台にした、人間の切なさを描いた作品なのだと思う。
(文芸WEBマガジン「カドブン」書評より抜粋)
https://kadobun.jp/reviews/bim1hbpkwr48.html

●木下大志さん(宮脇書店綾南店 書店員)
〈現代の黙示録〉という惹句がオビ等の宣伝に使われているが、「4人の語り手」という形式からみればむしろ〈現代の福音書〉といえる。ミステリー要素として、ある人物の遺体の行方が問題となる点からも、作者はかなり意識的なのではないか。では、いったいどんな福音が語られているというのだろうか。それは、この暗く重い圧倒的な熱量を帯びた物語の最後の一行に辿り着いた読者それぞれの、心というよりも身体の内に湧き上がる、言いようもない衝動ではないだろうか。絶望を感じる人よ。それはあなたがまだ憧れを捨て去ってはいない証なのだ。「憧れは僕らの手足を動かす。」そう静かに囁く作者の声が聞こえるようだ。


【圧倒的な、物語を超えた物語】

●山中由貴さん(TSUTAYA中万々店 書店員)
ああああ……!!!
最後の12ページ、なにも音が聞こえなくなった。最後の3ページ、時が止まった。最後の1行、今のすべてが遥か彼方へ過ぎ去っていった。なんでこんなものが書けるの……!!? 最高に面白くて最高につらい。つらいけど凄い。馴染みのない国や人々にはじめは尻込みするかもしれない。でも謎が掴んで離さない。ページがぐんぐん進む。文章がかっこいい。この世界が私たちの現実となにも変わらないことを知る。それぞれの語り手に惹き込まれながら、感情を小爆発させながら、それでもまだどこかで「物語」だと思っていた私を最後の最後に釘付けにした言葉。「奇跡とは……」最後の3ページ、一文一文が、力強い筆圧で、太く濃く書かれているようにしか思えない。こんな物語を与えてもらって、私たちはどう応えよう。どう生きていこう。魔術師が遥か先で見た光景を、どう創っていこう。


生きることの切なさ、絶望の先にある福音、小説の衣の奥に隠された、紛うかたなき現実の姿……。
読者の数だけ、それぞれ別の世界が見えるのではないかと思うほどの豊饒さを持つ、物語の力に打ちのめされること間違いなしの一冊です。年末年始、『彼らは世界にはなればなれに立っている』をじっくりと手に取ってみてはいかがでしょうか。


『彼らは世界にはなればなれに立っている』について

【STORY】
この町はとっくにひっくり返っている。みんなが気づいていないだけでな。
〈はじまりの町〉の初等科に通う少年・トゥーレ。ドレスの仕立てを仕事にする母は、「羽虫」と呼ばれる存在だ。誇り高い町の住人たちは、他所から来た人々を羽虫と蔑み、公然と差別している。町に20年ぶりに客船がやってきた日、歓迎の祭りに浮き立つ夜にそれは起こった。トゥーレ一家に向けて浴びせられた悪意。その代償のように引き起こされた「奇跡」。やがてトゥーレの母は誰にも告げずに姿を消した。
消えた母親の謎、町を蝕む悪意の連鎖、そして、迫りくる戦争の足音。
「相棒」の人気脚本家がいま私たちに突きつける、現代の黙示録!

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https://kadobun.jp/trial/krs_hb/63q5rf5bl30g.html

【書誌情報】
書名:彼らは世界にはなればなれに立っている
著者:太田愛
発売:2020年10月30日(金)※電子書籍も配信中
定価:本体1,700円+税
体裁:四六判上製
装丁:國枝達也
カバー写真:Seanen Middleton
頁数:368頁
ISBN:9784041095652
★情報サイト:
https://www.kadokawa.co.jp/product/322002000901/


著者プロフィール

太田 愛(おおた あい)
香川県生まれ。「相棒」「TRIC K2」などの刑事ドラマやサスペンスドラマの脚本を手がけ、2012年、『犯罪者 クリミナル』(上・下)で小説家デビュー。13年には第2作『幻夏』を発表。日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補になる。17年には上下巻の大作『天上の葦(あし)』を発表。高いエンターテインメント性に加え、国家によるメディア統制と権力への忖度の危険性を予見的に描き、大きな話題となった。