火守

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  • 定価: (本体円+税)
発売日:
2021年12月20日
判型:
新書変形判
商品形態:
単行本
ページ数:
80
ISBN:
9784041114889

火守

  • 著者 劉 慈欣
  • 訳者 池澤 春菜
  • 絵 西村 ツチカ
  • 定価: 円 (本体円+税)
発売日:
2021年12月20日
判型:
新書変形判
商品形態:
単行本
ページ数:
80
ISBN:
9784041114889

中国SF『三体』の劉慈欣、唯一の物語絵本。星を旅する物語。

人はそれぞれの星を持っている。病気の少女のため、地の果てに棲む火守の許を訪れたサシャは、火守の老人と共に少女の星を探す過酷な旅に出る--。世界的SF作家が放つ、心に沁みるハートウォーミングストーリー。

(本文より)サシャは東の孤島に立っていた。彼をこの世界の果てに放り出した帆船が、海と空の境界線に消えていく。最東端の島は、海に露出した錆さびた鉄片のようだった。周囲には命の気配すらない。
 サシャは島の奥に向かって歩き出した。何日も船酔いに苦しみ、いまだに足下がおぼつかなかったが、小さな島は中心に辿たどり着くのもすぐだった。低い丘に、彼を見つめる怪しい目のような黒い穴が開いている。穴の周りには黒い石炭の層があって、ここが炭坑であることを示していた。坑道の側の開けた場所には石窯がそびえ立ち、見たこともないほど大きな鉄鍋が載せられている。ひっくり返せば、サシャが今まで見た中で一番大きな屋根にもなりそうだ。
 といっても、サシャはこれまで遠出をしたことがなかった。大きな家を目したことだってない。ヒオリと恋に落ちたサシャにとって、大事なのは世界を見ることではなかった。だけど、彼は意を決し、彼女のために世界の最果てまで旅をしてきた。
 石窯の火は消え、巨大な鉄鍋から独特の油臭いにおいが立ち上り、辺りに漂っている。
人はそれぞれの星を持っている。病気の少女のため、地の果てに棲む火守の許を訪れたサシャは、火守の老人と共に少女の星を探す過酷な旅に出る--。世界的SF作家が放つ、心に沁みるハートウォーミングストーリー。

(本文より)サシャは東の孤島に立っていた。彼をこの世界の果てに放り出した帆船が、海と空の境界線に消えていく。最東端の島は、海に露出した錆さびた鉄片のようだった。周囲には命の気配すらない。
 サシャは島の奥に向かって歩き出した。何日も船酔いに苦しみ、いまだに足下がおぼつかなかったが、小さな島は中心に辿たどり着くのもすぐだった。低い丘に、彼を見つめる怪しい目のような黒い穴が開いている。穴の周りには黒い石炭の層があって、ここが炭坑であることを示していた。坑道の側の開けた場所には石窯がそびえ立ち、見たこともないほど大きな鉄鍋が載せられている。ひっくり返せば、サシャが今まで見た中で一番大きな屋根にもなりそうだ。
 といっても、サシャはこれまで遠出をしたことがなかった。大きな家を目したことだってない。ヒオリと恋に落ちたサシャにとって、大事なのは世界を見ることではなかった。だけど、彼は意を決し、彼女のために世界の最果てまで旅をしてきた。
 石窯の火は消え、巨大な鉄鍋から独特の油臭いにおいが立ち上り、辺りに漂っている。

※画像は表紙及び帯等、実際とは異なる場合があります。

もくじ

火守
訳者あとがき
プロフィール

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「火守」感想・レビュー
※ユーザーによる個人の感想です

  • 「三体」の作家による童話を日本人の画家による絵と共にたのしませてくれます。池澤さんの翻訳文も読みやすくこの画家による絵の色合いもぴったりの感じでした。やはりこの作家本来のSF的な感じもあるのですが月の存 「三体」の作家による童話を日本人の画家による絵と共にたのしませてくれます。池澤さんの翻訳文も読みやすくこの画家による絵の色合いもぴったりの感じでした。やはりこの作家本来のSF的な感じもあるのですが月の存在が今までの童話などとは異なる感じをあ立ててくれました。 …続きを読む
    KAZOO
    2022年03月27日
    107人がナイス!しています
  • 2019年4月北京聯合出版公司刊の烧火工 THE FIRE KEEPERを翻訳して、2021年12月KADOKAWA刊。童話。火守という仕事が明らかになっていく過程が楽しい。こんなに童話童話した話だとは想像もできませんでした。お話にマ 2019年4月北京聯合出版公司刊の烧火工 THE FIRE KEEPERを翻訳して、2021年12月KADOKAWA刊。童話。火守という仕事が明らかになっていく過程が楽しい。こんなに童話童話した話だとは想像もできませんでした。お話にマッチした西村ツチカさんの絵が良いです。原著も絵が素敵なようで、機会があれば見てみたいです。 …続きを読む
    ひさか
    2022年04月24日
    95人がナイス!しています
  • 幻想的。詩的な物語だった。著者初の童話ということだが、童話というよりもむしろ神話のような壮大な世界観。西村ツチカさんのイラストが物語の雰囲気を盛り上げている。翻訳の池澤春菜さんは声優でもあるんですね。 幻想的。詩的な物語だった。著者初の童話ということだが、童話というよりもむしろ神話のような壮大な世界観。西村ツチカさんのイラストが物語の雰囲気を盛り上げている。翻訳の池澤春菜さんは声優でもあるんですね。昔、教育テレビでお姫様をやっていたような……。美しい物語だが、主人公の選択は納得いかないなあ。。 …続きを読む
    はる
    2022年08月27日
    92人がナイス!しています

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