「いのちの初夜」感想・レビュー
※ユーザーによる個人の感想です
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まず最初に述べたいことは、この小説は筑摩書房「現代日本文学全集」(昭和31年発刊)で読みました。ハンセン病を患った著者北條民雄自ら執筆したわが国最初の体験記です。執筆時期は今からちょうど80年前の昭和
まず最初に述べたいことは、この小説は筑摩書房「現代日本文学全集」(昭和31年発刊)で読みました。ハンセン病を患った著者北條民雄自ら執筆したわが国最初の体験記です。執筆時期は今からちょうど80年前の昭和11年2月。川端康成の後押しで広く世間に知られます。身ぐるみ剥がされた療養所の中で、一夜のある人物の出逢いから、限られた命を全うして行く主人公の姿が愛おしく映ります。死と絶えず向き合う情景描写に圧倒され、息が詰まる思いで読み終えました。文学の使命を見せてくれる手本となる小説です。彼は3年後24歳の若さで逝去
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【みんさん課題本】この本の感想を衝撃、という言葉で表して良いのだろうか。怖い、と言ってもいいのだろうか。逃げたい、目を逸らしたいと何度も思ってしまった。課題でなければ読み切れなかったと思う。ハンセン氏
【みんさん課題本】この本の感想を衝撃、という言葉で表して良いのだろうか。怖い、と言ってもいいのだろうか。逃げたい、目を逸らしたいと何度も思ってしまった。課題でなければ読み切れなかったと思う。ハンセン氏病が不治の病だった戦後。正にその病に罹患し、隔離施設に入所し、この小説を著し、そして23歳で亡くなった北條民雄。実体験に基づく施設での重症患者の描写が凄絶。顔が歪み崩れ、全身の神経痛に呻き、足を失い、眼球を失い…。その中で妊娠中に発症した患者の出産を喜ぶ周囲を描いた「吹雪の産声」に哀しい程胸を締め付けられた。
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2016年756冊め。ハンセン病患者であり療養所で夭折した著者の代表作(表題作)と他7編の短編が収録されている。どの話も病気そのものの苦しみと社会から抹殺される悲しみに溢れている。私がハンセン病という
2016年756冊め。ハンセン病患者であり療養所で夭折した著者の代表作(表題作)と他7編の短編が収録されている。どの話も病気そのものの苦しみと社会から抹殺される悲しみに溢れている。私がハンセン病というものに初めに触れたのは小学校低学年頃だった。両親が独特の教育をするタイプだったおかげで、どういう伝手だったのかハンセン病療養所を訪ねたことがあったのだ。悪名高き「らい予防法」の廃止(平成8年)前のことである。昭和22年には薬により完治する病になっていたのに、無知と偏見による隔離政策の罪はあまりにも重い。(続)
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