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『ドラフト最下位』刊行記念イベントレポート どうなる? プロ野球ドラフト2019

 プロ野球選手になれる者となれない者を分けるものは、何なのか――?

 プロ野球ドラフト会議で最後に名前を呼ばれる選手、つまりドラフト最下位指名選手は毎年必ず存在する。そんなプロとアマの境界線に立った16名の生き様を描いた書籍が『ドラフト最下位』(KADOKAWA)だ。

 10月15日、著者の村瀬秀信さんが大阪・ロフトプラスワンWESTで出版記念トークイベントを開いた。2日後に今年のドラフト会議が迫っていることもあり、集まった観衆の興味もドラフトそのものに向くなか、村瀬さんは軽妙な語り口で取材裏話を明かした。

「今年は福浦和也(ロッテ)と三輪正義(ヤクルト)という『ドラフト最下位』のビッグネームが引退してしまいました。でも、ほとんどのドラフト最下位はプロで活躍できなかった選手たちです。それでも、そのなかには不思議な野球人生を送った人がたくさんいました」

 そう言うと、本書でインタビューした主な選手の経歴について続けた。

「中学・高校で1回も公式戦に出られなかった人、大工からプロになった人、部員11人の公立無名校出身の人、『怪物』と呼ばれていたのにドラフト最下位まで落ちてしまった人、就職活動に失敗してプロ志望になった人、中学校の先生をしていた人、ガソリンスタンドでオイルを売っていた人……これは三輪さんですね(笑)」

 とりわけ、村瀬さんが思い入れのあるドラフト最下位として挙げたのは、「ジャンポ鈴木」の異名を取った鈴木弘(1971年ロッテ15位)だった。

「身長が196センチもあるけど、ほとんど無名だったらしいんです。大東文化大時代にたまたまスカウトの目に止まって、サンフランシスコ・ジャイアンツと契約を結ぶんですけど、その後が凄い。アメリカに渡って、すぐに訳もわからず日米野球でウィリー・メイズらとともに来日。アメリカでシーズンが始まるとすぐにマイナーリーグをクビになり、日本のプロテストを受けて翌年にロッテに入団するという『逆輸入』の異様な選手でした」

 多くの野球ファンは「鈴木弘」という人物の存在すら知らないはずだ。だが、たとえ歴史に埋もれた選手だろうと、掘り起こしていくと今となっては意外なエピソードが発掘されていく。村瀬さんはその醍醐味を味わいながら、執筆にあたったという。

「プロになれた人というのはやっぱり普通の人とはどこか違うものなんですけど、ドラフト最下位の人たちは『普通の人』に近い感覚があるのかもしれません。だから親近感が湧いて、その体験を聞くだけでも本当に面白かったです」

 イベント後半は今年のドラフト会議について、識者を交えて語り尽くした。今年のドラフト会議は佐々木朗希(大船渡)、奥川恭伸(星稜)、森下暢仁(明治大)の3投手が目玉候補と言われている。来場者に「もし自分がスカウトなら3投手のなかで誰がほしいか?」と挙手制のアンケートを取ると、40パーセントの来場者が奥川に手を挙げ、佐々木と森下は30パーセントずつだった。今夏の甲子園で安定感のある投球を披露し、即戦力に近い実力が評価されたようだ。

 村瀬さんはスマッシュヒットした『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史』(双葉社)の著者でもあり、イベント来場者には横浜DeNAベイスターズのファンが多かった。そこで話題はベイスターズのドラフト戦略へと移った。

 今季のDeNAは2位と躍進しつつも、スター選手の筒香嘉智がポスティングシステムを利用してメジャーリーグに渡ることが確実な情勢になっている。故障者が出やすい投手陣、手薄な若い捕手と遊撃手も補強ポイントになりそうだ。

 筒香の穴は細川成也、伊藤裕季也、佐野恵太といった現有戦力の有望株に期待しつつ、広角に鋭い打球を放つ勝俣翔貴(国際武道大)のような強打者を獲得しておきたい。投手は1位で将来性も確実性も兼備した奥川がイチオシ。そして中位から下位指名で堀田晃(西濃運輸)のような即戦力リリーフを確保すべきという声があった。捕手は上位指名ならアマ屈指の強肩・海野隆司(東海大)、下位指名なら藤田健斗(中京学院大中京)の名前も挙がった。二遊間の候補としては、DeNAスカウト陣が熱視線を送る武岡龍世(八戸学院光星)に加え、曲芸のような守備を見せる上野響平(京都国際)も「ポスト大和」の一番手になるかもしれない。

 そして、17日に開かれるドラフト会議では、今年も新たな「ドラフト最下位」が誕生する。ドラフト最下位として指名される男は、どんな野球人生を歩むのだろうか。スター街道とは一味違う世界に思いを馳せながら、今年のドラフトを見てみてはいかがだろうか。

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