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掲載開始日 2020年01月28日

令和最初の「第65回角川俳句賞・短歌賞」贈呈式および賀詞交換会を盛大に開催!!

日本の文化振興に寄与するための事業を手掛ける公益財団法人 角川文化振興財団(所在地:東京都千代田区富士見1-12-15 理事長:角川歴彦)は、令和2年1月27日(月)、「第65回角川俳句賞・短歌賞」の贈呈式と賀詞交換会を千代田区の東京會舘にて開催しました。



「第65回 角川俳句賞」受賞作


「玉虫」(五十句) 西村麒麟(にしむら きりん)=本名 西村秀和
「鷲に朝日」(五十句) 抜井諒一(ぬくい りょういち)=本名同じ



「第65回 角川短歌賞」受賞作


「季の風」(五十首) 田中道孝(たなか みちたか)=本名同じ
「螺旋階段」(五十首) 鍋島恵子(なべしま けいこ)=本名同じ



 この度、今年65回目を数える角川俳句賞・短歌賞の贈呈式と賀詞交換会が、東京千代田区の「東京會舘」において開催されました。

 「角川俳句賞」は未発表俳句五十句の応募作品が対象で、本年は応募総数567篇の中から、西村麒麟氏、抜井諒一氏の2作品が、また「角川短歌賞」は新作未発表短歌五十首の応募作品が対象で、本年は応募総数703篇の中から、田中道孝氏、鍋島恵子の2作品が受賞しました。

 また同日、「第14回角川全国俳句大賞」「第11回角川全国短歌大賞」の贈呈式も行われ、大賞、準賞の各賞が贈呈されました。



「角川俳句賞」受賞のことば


西村麒麟
【略歴】昭和58年大阪市生まれ。「古志」同人。第1回石田波郷新人賞受賞。第5回田中裕明賞受賞。第7回北斗賞受賞。句集に『鶉』『鴨』。川崎市在住。





●受賞のことば
 母が亡くなったのは二〇一八年の二月でした。複雑な家庭で育ったため、それは僕にとって初めての葬儀でした。それから後は命について考える日々が続きました。僕と僕の愛するものの全てもいつかは滅んでしまう、そんな当たり前の事に随分と悩みました。今から思うと心身ともに疲れ切っていたのかもしれません。一年ほど経過した頃でしょうか、鳥や虫達の声が以前より澄んで聞こえる事に気が付きました。雲の形や露の玉でさえも、大小様々な姿をしていてなんと面白い事かと。それから急に、どうしても山梨の石和が見たくなり、今年だけで三度その地を訪れました。受賞作のいくつかは山廬や石和温泉での俳句です。雉子は美しい。辛夷の花は美しい。水や風、そして人も。僕は歩く事が好きです、駅から山廬の往復は約四時間、その間に多くの花や動物と出会いました。徒歩の速度でないと見る事が出来ないたくさんの命を感じました。
 この度は素晴らしい賞をありがとうございます。僕を育てて下さった全ての人に感謝申し上げます。
                                      『俳句』2019年11月号より
抜井諒一
【略歴】昭和57年3月、高崎市生まれ。山本素竹に師事。第3回石田波郷新人賞奨励賞、第23回日本伝統俳句協会新人賞、第1回星野立子新人賞、第6回北斗賞、第30回村上鬼城賞新人賞受賞。句集に『真青』。俳句同人誌「群青」同人。日本伝統俳句協会員。市川市在住。


●受賞の言葉
 受賞の報を受けてから、まずは嬉しさが込み上げてきたが、すぐに「やらねば」という焦燥感でいっぱいになった。今回の作品を粒ぞろいにできていない自分の甘さが、なんだか恥ずかしく思えてきたからである。これをきっかけとして、さらに感性を磨き、志向する俳句の境地を切り開くため挑戦を続けたい。評価は頭の片隅に置き、まずは自分の心に誠実に、と書いてはみるものの、それを作品に表すことの難しさは、一句作るたびに痛感している。
 優れた作品には影響力がある。私自身、佳句に出会うたび、感受性や大袈裟に言えば人生が少しずつ変わってきた実感がある。読み手に影響を与える、そんな作品を作ることができたらと常々思っているが、ひとまず、あまり煩わしいことは考えず、これまでどおり自然の中で模索と創作を続けて行くつもりである。あらためて、選考委員ならびに関係者の方々、「群青」共同代表の櫂未知子、佐藤郁良両氏と誌友、「卯浪俳句会」の仲間や今井肖子氏ほか先生達、そして、わがままな私に付き合ってくれた人に感謝を、とりわけ、師である山本素竹氏には深く敬意を表する。
                                      『俳句』2019年11月号より

●表彰 賞状・記念品ならびに副賞30万円
●選考委員 仁平勝・正木ゆう子・小澤實・岸本尚毅の各氏(敬称略)



「角川短歌賞」受賞のことば

田中道孝
【略歴】昭和34年生まれ。リルケの「若き詩人への手紙」を読み、高安国世を知る。平成21年塔短歌会入会。



●受賞のことば
 短歌から逃げたくなって、俳句を読むようになった。山口誓子の句集『山嶽』に岡井隆が次の文章を書いている。
 
  誓子は「寂しい」俳人である。誓子を思うと、人の世の、人間の「寂しさ」がやってくる。それは、途方もなく深い感情で、どんどんわたしを奈落へとひきずり込む。

 この文章を読んだとき、目の前が開けたように思った。そうだ、連作のテーマを寂しさにしよう。じめじめしたものではなく、照れ臭い言葉ではあるが「さわやかな寂しさ」を書こう。読者の心にそういうものが伝わればうれしい。私が工事現場の歌を書くことで、話題性で評価されるのは、いやだと思っていたが、河野裕子先生だったらなんと言うだろう。
 「なにをごちゃごちゃ言っているの。工事の歌をたくさん作りなさい。それと、あなたみたいな作り方をしていたら疲れるわよ」と言われるだろう。私は背伸びをせずに素直に書いてゆこう。最後に、塔短歌会のみなさんと、チャンスをくれた、角川『短歌』のみなさんに感謝します。
                                      『短歌』2019年11月号より
鍋島恵子
【略歴】昭和52年、富山県高岡市生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。現在、富山県在住。平成15年頃より短歌をはじめる。



●受賞のことば
 短歌を作りはじめたのは就職してからだが、十代のころから興味は持っていた。わたしが高校生のころ、伯父が突然俳句の投稿をはじめたことで、新聞の俳壇と歌壇の存在を知ったのがきっかけだ。
 定型に収まるよう言葉を削ぎ落としていくのは楽しい。昔から口数が少なく、言葉を重ねるより、少ない言葉で思いを伝えることの方が好きだった。ただ、なぜ俳句ではなく短歌だったのかはわからない。本能的に選び取った短歌で、角川短歌賞を受賞できたことは本当に幸運だった。
 伯父はわたしの母の兄だが、母はわたしが高校二年のときに癌で亡くなった。「塔」に所属していた約一年間を除き、ひとりで短歌を作ってきたが、ひとりでも続けられたのは、何かひとつでいいから、やりきることができたと思って死にたいという気持ちが根底にあるからだ。
 こんなわたしだが、受賞の知らせを受けてからは、短歌に対する責任のようなものを感じている。これからはもう少し活動の幅を広げ、他者の視点も感じていきたい。
               『短歌』2019年11月号より
●表彰 賞状・記念品ならびに副賞30万円
●選考委員 伊藤一彦・永田和宏・小池光・東直子の各氏(敬称略)


「第14回角川全国俳句大賞」「第11回角川全国短歌大賞」大賞・準賞受賞の皆様




『角川俳句賞』
http://www.kadokawa-zaidan.or.jp/news/2019/09/

『角川短歌賞』
http://www.kadokawa-zaidan.or.jp/news/2019/08/

角川文化振興財団 公式サイト
http://www.kadokawa-zaidan.or.jp/

『俳句』
http://www.kadokawa-zaidan.or.jp/haiku/

『短歌』
http://www.kadokawa-zaidan.or.jp/tanka/

【本件に関するお問合せ先】
公益財団法人 角川文化振興財団
『俳句』編集部 編集長 立木成芳
TEL:03-5215-7819/FAX:03-5215-7822
『短歌』編集部 編集長 石川一郎
TEL:03-5215-7821/FAX:03-5215-7822