• 戯作者・馬琴の壮絶な人生が明らかになった実の世界。特に白内障によって隻眼となったうえに、残る一眼にも侵食した後の、漢字を知らない亡き息子の妻・お路の凄まじいまでの気力に感動した。そのおかげで八犬伝は未 戯作者・馬琴の壮絶な人生が明らかになった実の世界。特に白内障によって隻眼となったうえに、残る一眼にも侵食した後の、漢字を知らない亡き息子の妻・お路の凄まじいまでの気力に感動した。そのおかげで八犬伝は未完の大作とならずに済んだ。まあ、馬琴の微に入り細を穿つ文章は冗長だ。しかし、完成したからこそ今に伝わったとも思える。そして、著者はその冗長さを排して、読者に八犬伝の面白さを伝えてくれた。終盤の幼犬士・犬江親兵衛の活躍は、まさに桃太郎のような微笑ましい一篇に仕上がっていた。 …続きを読む
  saga

  2023年01月29日
  56人がナイス！しています
• 「虚の世界」ではいよいよ八犬士が整う。特に僅か10歳の犬江親兵衛の登場と大活躍には胸躍らされる。一方の「実の世界」における馬琴と北斎の交流も相変わらず面白く、作中で鶴屋南北に「虚と実を交互に描くことでた 「虚の世界」ではいよいよ八犬士が整う。特に僅か10歳の犬江親兵衛の登場と大活躍には胸躍らされる。一方の「実の世界」における馬琴と北斎の交流も相変わらず面白く、作中で鶴屋南北に「虚と実を交互に描くことでただの加え算ではなく掛け算のような妙な味が出てきやせんか」と言わせているがまさにその通りだろう。そして一体どんな幕引きになるのかと思いながら読み進めると、最終章「虚実冥合」では「虚」を手際よく纏めて馬琴作品の欠陥を救いつつ、「実」では凄まじい執念を持って馬琴が八犬伝を完成させたことを描いている。見事な傑作。 …続きを読む
  Sam

  2022年12月04日
  53人がナイス！しています
• 上下巻とも読んだ結果、滝沢馬琴の物語だったなぁというのが結論です。 上巻では、八犬伝の物語自体に、魅力が高かったのですが、下巻での八犬伝の内容は、あまり魅力が感じられなくなり、逆に「実」の物語に魅力が 上下巻とも読んだ結果、滝沢馬琴の物語だったなぁというのが結論です。 上巻では、八犬伝の物語自体に、魅力が高かったのですが、下巻での八犬伝の内容は、あまり魅力が感じられなくなり、逆に「実」の物語に魅力が増してきました。結局のところ、八犬伝という物語においては、「実」の希薄さが、現代のなろう小説に近い印象になるのだろうと思います。この辺は、人それぞれの好みもあるので、一概には言えませんが、八犬伝に対しては、風太郎氏も同じような視線を持っていたように感じました。 …続きを読む
  つっちー

  2023年11月21日
  47人がナイス！しています

powered by