野性時代

誌上小説講座"


第2回「一人称の書き方」

「プロが教える『小説 野性時代』誌上小説講座」は、作家・大沢在昌さんを講師にお迎えし、12名の受講生が作家としての技術と心得を教わる様子を誌上でレポートする連載企画です。当ページでは、誌面の中から、特に重要なポイントのみをダイジェストでお届けしていきます。これではもの足りない、もっと詳しく知りたいという方は、是非「小説 野性時代」をお手にとってみてください。


第2回「一人称の書き方」


その1   その2   その3

講評 課題「一人称で書く」


400字詰め原稿用紙30枚以内、一人称で書くという制限で提出された課題に対しての、大沢在昌講師のコメントを抜粋してご紹介します。

▼一人称の情報の入り口は一点
一人称というのは視点が一つしかない。情報が一点からしか入らないということは物語を動かす上でかなりの足枷になる。

▼理論武装でリアリティを出す
単なる思いつきだとしても、その思いつきの理論武装がきちんと書けていれば、小説に変なリアリティを与え、読者を引っ張り込むフックにもなってくれる。

▼主人公の年齢にあった描写
電話の相手が15歳でも中年でも、幼稚園児に「若い男」かどうかは絶対わからない。一人称だからここは幼稚園児の視点で書かなければ。

▼時代物を一人称で書くのは難しい

▼最終候補に残っても受賞できない理由
登場人物が善人ばかりの小説は、新人賞の応募作としては弱い。人間というのは善意があってもすれ違うことがあるし、憎しみや悲しみが生まれたり、刃傷沙汰になったりもする。だからこそ大きなドラマが生まれる。

▼会話での説明に頼りすぎない
一人称で書く場合、会話で説明することも確かに重要だが、その反面、あまりにもそれに頼りすぎると中身がスカスカになってしまう。

▼一般の読者に向けた題材を
自分の作家になりたいという思いを、一般の読者向けに書いたとしても、「知ったことではない」と言われるだけ。

▼読後感と評価
読後感の悪い作品を好きな人、認める人は世の中に必ずいる。ただ、読者の好き嫌いははっきり分かれるだろうし、評価も割れる。

▼文章表現の幼さ
若者を主人公にしているからといって、すべての言葉遣いや地の文までが幼くある必要はまったくない。

▼専門用語の効果的な使い方
専門用語は主人公とそれを取りまく世界が特殊なものだということをわからせる材料なので、もう少しポイントを絞った方がいい。あるいはどうしても専門用語を使う必要があるのならば、もっとわかりやすい書き方にしないと読者には伝わらない。

▼作品の長さとストーリー展開
引っ張って引っ張って、その結果オチが利いてくるというケースももちろんあるが、今回のオチにはこの枚数は必要なかった。

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質疑応答

講座中に出た質問と、それに対する大沢在昌講師の回答をまとめました。

Q.どうすれば嫌な人が書けるようになるか。
A.嫌な人間を書こうとすればするほど嘘っぽくなってしまう。最初から嫌な人を書こうとせず、嫌な人に見えなかった人間がだんだん嫌な奴に見えてくる、嫌な人にならざるをえない感じになっていく、読者の中にじわじわ嫌な感じが広がっていく、そういう風に書けばいい。

Q.自分の実体験を作品に反映させることはあるか?
A.もちろんある。小説を書く上で役に立つのは、楽しい体験よりも、悲しいこと、腹が立ったこと、惨めなこと。では、その惨めさをどう書くか。「ザ・惨め」という書き方をしても読者にはなかなか伝わらない。むしろ、本人はちっとも惨めだと思っていないのに周りから惨めだと思われているほうが、ずっと惨めな印象になる。

Q.タイトルをつける秘訣は?
A.一つだけ言うなら、特に長編の場合、すでに世に出ているものはできれば避けること。

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日常で気をつけること

▼自分を刺激し続ける
小説でも、漫画でも、映画でも、芝居でも、音楽でも、何でもいい。優れた音楽を聴いて、「この音楽を小説にするとしたら、どういう小説になるだろう」と考える。そういう気持ちを常に持って、他の人の創作物に触れる習慣をつけること。

▼アイデア帳をいつも身近に置いておく
メモしたことを今すぐに使う必要はない。溜めていって、あとでそれを振り返った時に、違うネタが結びつくこともある。

▼どんな時でも人間観察
公共交通機関で移動する時など、観察することは人物描写をする上での大きな材料になる。

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