モルフェウスの領域 / 海堂尊

田口、高階病院長、如月翔子ら“バチスタ”シリーズの人気キャラが揃い踏み! 海堂尊ワールドの新境地。驚愕の最先端医療ミステリー!!

モルフェウスの領域

発売日:2013年 06月 21日
定価(税込): 580円

キャラクター相関図
ストーリー

日比野涼子は桜宮市にある未来医学探究センターで働いている。
東城大学医学部から委託された資料整理の傍ら、世界初の「コールドスリープ」技術により人工的な眠りについた
少年・佐々木アツシの生命維持を担当していた。
アツシは網膜芽腫が再発し両眼失明の危機にあったが、特効薬の認可を待つために五年間の<凍眠>を選んだのだ。
だが少年が目覚める際に重大な問題が立ちはだかることに気づいた涼子は、彼を守るための戦いを開始する——。

『モルフェウスの領域』刊行記念 著者インタビューはコチラ 「辻褄合わせ」が産んだ豊潤な物語
著者略歴
海堂尊
海堂尊

1961年、千葉県生まれ。
2006年、『チーム・バチスタの栄光』で 第4回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。 同作は08年映画・ドラマ化され、計300万部を超える大ヒットを記録する。 著書に『ナイチンゲールの沈黙』『螺鈿迷宮』『ジェネラル・ルージュの凱旋』 『極北クレイマー』など多数。 08年『死因不明社会』で科学ジャーナリスト賞受賞。

著者からのメッセージ

ストーリー
100万部突破!
螺鈿迷宮(らでんめいきゅう)

螺鈿迷宮(らでんめいきゅう)

[ 内容 ]
「この病院、あまりにも人が死にすぎる」——終末医療の最先端施設として注目を集める桜宮病院。黒い噂のあるその病院に、東城大学の医学生・天馬が潜入した。だがそこでは、毎夜のように不審死が……。

螺鈿迷宮

輝天炎上

輝天炎上

[ 内容 ]
碧翠院桜宮病院の全焼から1年。医学生・天馬はゼミの課題で「日本の死因究明制度」を調べることに。やがて制度の矛盾に気づき始める。その頃、桜宮一族の生き残りが活動を始め……『螺鈿迷宮』の続編登場!

輝天炎上

読者モニターの方々のご感想

まろ さん (30代女性 その他)
 雑誌に掲載された、というのを聞いて、早く単行本にならないかと待っていました。ただ、これまでの著者の作品が、現実の延長線上にあるものだったのに対し、今回は「コールドスリープ」という現実感にやや欠ける題材だったため、「ありえそうな話」として楽しむことができるのか心配でした。そういった先入観を持ってみるためか、最初は「コールドスリープ」にまつわる描写が気になったりもしたのですが、読み進めるうちに、あっという間に主人公涼子の社会システムへの「孤独な挑戦」にひきこまれてしまいました。
 もともとは、今回の作品では、今までの作品に登場した人物のその後が読めるということが一番の期待だったのですが、結局、新登場人物の涼子はどうなったんだろう、と、「その後」が気になる人物がまたもや増え、読んだばかりにもかかわらず、早く次回作がでないかなあ、と思ってしまいました。今までの作品の登場人物に思い入れのある方は、「モルフェウス」は嬉しい作品だと思います。
みけねこ さん (40代女性 主婦)
 田口・白鳥シリーズ本編や、『1988』『1990』の桜宮サーガ過去編、『たまご』のかなり未来のお話と比べて、ぐっと人間性を考えさせられた作品でした。時間の不可逆性の中で生きることが当たり前で、記憶が連続していることを信じて疑わない日々を生きていて、時間が止まること、記憶を外部から操作されることが信じられない「常識」と、心の片隅に浮かぶ「ひょっとしたら…」という不安。私達は「人間」をどう定義しているのか、「神」が居るならやはり「人間」の姿をしているのか。それとも「神」は「国家・官僚」なのか…。ちっぽけな「人間」が、過酷な運命に立ち向かうのに必要なものは何か?やはり「神・見守るものの存在」ということなのか…。そんなこと考えながら読み終えました。
 誰が一番つよい人なのか、そう思って読み返すと、涼子や翔子のような女性(佳奈も含む、かな)、それも母性を具えた存在に、アツシはもちろん西野でさえも救われていて、その視線のあたたかさは被保護者にどこまでもパワーを与える。彼らの行動ははすべて、自分を支えてくれる母性を守ろうとするパワーです(彼ら自身のアイデンティティのためでもあると思いますが)。翻って国民が今の官僚政治や国そのものに希望が持てない、または信じられない感情を隠そうともしないのは、国の構造が自分達を守ってくれているとは言いがたいことを知ってしまったからでしょう。海堂作品は、そうして国民が知りたかったこと、長い間国家ぐるみで隠されてきた事実や真実の一端を、読者の私達に見せてくれる。この『モルフェウスの領域』は、その「知りたかったこと」が随所に出てくるので、国民として哀しくもあり、でも希望や未来を信じたい気持ちにさせられました。太陽の光の下では、実存するものは影をまとう、同じように、爽快なエンディングのお話の後ろにも濃い影が落ちている、そんな読後感でした。
398 さん (30代女性 主婦)
 これはすごい!エンターテイメントです!!
一般人には理解し難い医学の世界をわかりやすく、しかも、ここまで楽しませてくれるのは海堂作品をおいて他にはないんじゃないかしら。
 コールドスリープ(人工凍眠)が今回のテーマ。
 眼の癌に侵された少年が新薬の認知を待って5年のコールドスリープに入る。
 果たして5年後、新薬は認知されているのだろうか。
 スリープ中の問題点やスリープから目覚めた後の問題点、政府の考えや動きが物語とともに頭にずんずん入ってきます。
 そして、コールドスリープをとりまく人々の感情。
 スリープに入った少年を「モルフェウス」と名づけた女性は最後・・・。
 端から端までどの登場人物もそれぞれの魅力があり、そこかしこに伏線がはられています
 最後まで一気に読んじゃいました! 海堂ファンは勿論のこと、海堂作品を未読の方も、これを読めば一気に海堂ワールドのとりこになるはずです!!
mutantmogura さん (50代男性 専門職)
 まずは「彼」の再登場に感激!まさかここでまた逢えるとは!しかも、主人公の人生観に大きな影響を及ぼす人物としての設定。これは嬉しいかぎりです。本作のテーマはコールドスリープ。しかし、このテーマの作品は本作といいハインライン「夏への扉」といい、「過去」が大きく関与するためか、必ず哀切感が漂いますが、本作は特にその着地点に。ある意味ハッピーエンドのはずなのにね。スリーパーをめぐる議論、主人公とあの教授とのメールのやりとりなど、読みどころはたくさんありますが、本作も他の海堂作品のように医療行政に対する著者のスタンスが良く分かり、考えさせられる点が多々あります。何より前半の静謐な中に込められた主人公の熱い思いは、これまでの海堂作品を知っている人にとって必読のものでしょう。そして、特に私のような「彼」の贔屓筋には!
ひとみ さん (40代女性 主婦)
 「桜宮サーガ」の最高到達点!の意味がわかりました。「コールドスリープ」が実際にあるのかもしれないと思ってしまうほど、何度もその説明部分を読んでしまいました。医学がわからなくてもかじった気持ちにさせてくれます。
 この本を読みながら、他に3冊の著者の本を読み返しました。自分の頭の中でパズルが埋まっていく感覚を感じながら・・・。
 涼子がレクチャーをうけた医務官は「彼」なのか?とか、読みながら自分も謎解きをしていきました。いろんな伏線があるので、早く次回作・・・続きが読みたいです。
 涼子の未来、曾根崎伸一郎の目線から・・、西野の過去、「彼」の活躍、田口先生の論文、もちろんアツシの未来・・・まだまだ「桜宮サーガ」は続きそうですね。読むまえも楽しみでしたが、読んだ後も楽しみです。こういう気持ちになるのは「海堂尊ワールド」にどっぷりとハマっているせいなのでしょうね。
ミッキー さん (40代女性 主婦)
「ナイチンゲール〜」に出てきたあの小さかったアツシ君と綺麗な翔子さんにもう一度巡り合う事が出来て嬉しかったです。
 海堂さんの小説はいろいろリンクしているので、いつかは西野さんの物語を読んでみたいと思っているのは私だけでしょうか?
スミレ さん (20代女性 学生)
 私が海堂さんの作品で最も好きなところは、読み終わった後にスッキリした気分になれるところです。医療としての課題は残されるものの、物語としては基本的にハッピーエンドなので、その類の作品が好きな読者にはオススメです。
 『モルフェウスの領域』についてですが、これは二重の意味で面白くて興味深い作品です。まずこの作品が、突発的な事件を題材にするのではなく、長期的な議論の対象となっている問題をトピックとして扱っているという点です。その意味で、Aiの是非を問う『イノセント・ゲリラの祝祭』と同様です。それにもかかわらず読者を引き込んでしまうのは、登場人物が非常に生き生きと描かれているからだと思います。次に、海堂さんの以前の作品の登場人物が登場する点です。物語を読んでいると、つい登場人物に感情が移入してしまいます。物語を読み終わったときに、○○はこの後どうなるだろう、など考えるのは、きっと私だけではないはずです。その点、海堂さんの作品を読み続けているといろいろな登場人物が再度描かれるので、私は読んでいて本当に楽しい気分になります。
 またこの作品には、物語の背景に、海堂さんの作品によく見られる厚生労働省の保身的姿勢に対する批判があります。物語なので極端に描かれている側面もあると思いますが、改めて官僚体制を見直すきっかけになりました。私の周りには国?試験を通過した人が多いのですが、保身的でいわゆる「ガリ勉」という人が多いです。私は一部分しか見ていないかもしれませんが、この人たちが日本国家の骨子となる組織を動かしていくのか、と思うと不安になる人が多いです。その意味でも、海堂さんにこれからも官僚の保身的な体制を攻撃していただきたいなと思います。
 最後になりましたが、物語としても医療問題を扱う作品としても、本当に面白い作品だと思いました。オススメです。
giglio さん (20代女性 学生)
 今まで読んだ海堂氏の作品の中で一番難しく、一番せつない物語。読み終わった後すっと涙が出た。設定が近未来であることや「コールドスリープ」にまつわる医療問題がテーマのひとつだったので、手塚治の「鉄腕アトム」を思わせる神秘的な雰囲気も感じられた。
 おなじみの東城大学の先生方のやり取りはいつもと変わらず面白い!また、新たな登場人物と、他の作品に出てきた人物の意外なつながりは読んでいてわくわくする。「ん?この人って…?」と思わず前作を読み返してしまった。桜宮が今後どうなっていくのか、気になって仕方がない!
しらべ柴 さん (30代女性 主婦)
 近未来のおとぎ話−これまでの海堂作品とは少し色合いが違う印象。社会問題への鋭い洞察、官僚批判など、海堂節は健在ですが、この作品は今までになく、ロマンティックでファンタジックな物語でした。
 SF作品や近未来物で見慣れた「コールドスリープ」という、将来、導入される(?)かもしれない、長期間の人工的な眠りを駆使した技術。まだ、現実世界では夢のようなこの技術をめぐっての物語が、より夢見心地で感傷的な気分にさせたのかなとも思います。
 しかし、なんと言っても、眠りについていた少年を見守り続けた主人公涼子のこの少年への強い思いがなにより物語をロマンティックに仕上げたと思います。
 新しいことを始めるときの医学界と法曹界が絡まる問題や、既存権益に固執する官僚批判など、海堂作品に一貫する問題提議もあいかわらず明瞭で気持ちがいいです。
 他作品でなじみのキャラクターもちょろちょろ顔を出し、あの、佐々木アツシくんの成長がみられたのも、楽しめました。
タク さん (30代女性 会社員)
 さすが、海堂尊さん!という作品でした。
現在の日本への痛烈なる批判と皮肉を込めつつ、海堂さんならではの論理戦が展開。海堂さんの喜々とした表情が目に浮かびました。
 日本という国とその法律に、あの「アツシ」君を守る為だけに全身全霊、自分の持つ知識全てをかけて戦う涼子。その姿が、とても感動的でした。甘い言葉はないけれど、海堂さんならではの「究極の愛」の物語ですね。
 今までの作品も伏線として大活躍してましたし。懐かしの人物の登場がとても嬉しかったです。「アツシ」くんは私にとってはなかなかステキなキャラでしたので。
 読み終わった後に、論理戦をもう一度改めて味わいたくなる作品でした。
ななみ さん (30代女性 会社員)
 この作品では大好きなバチスタシリーズのさらに何年か後を描いており、バチスタシリーズで登場したキャラクターが多数登場し、親しみを感じるとともにそれぞれのキャラクターの成長ぶりも感じることができ、温かい気持ちになりました。
 第1部では、コールドスリープ(凍眠)技術により、5年間の眠りについている少年の管理を行う女性、日比野涼子さんの視点から物語が進められますが、凍眠制度に関し、法律的な観点から多くの問題が提起されており、これまで映画や本で描かれる凍眠とはまた違った視点から考えることができ、新鮮でした。
 第2部では、目覚めた少年を中心に話が展開していきますが、第1部では謎の部分だったことが次々に繋がっていき、どんどん引き込まれました。最後には、涼子さんのあっと驚く決断が明かされ驚きましたが、同時に彼女なら…と思い、妙に納得してしまいました。
 バチスタシリーズでは白鳥圭介のクセのあるキャラクターに魅力を感じていましたが、今回の作品では、そのようなキャラクターはいないにも関わらず一気に楽しんで読むことができ、その他の海堂尊さんの作品も読んで桜宮市の一市民になりたいと思うような作品でした。
AstiN さん (20代男性 学生)
 これまでの作品のミッシングリンク的な時間軸で行われた物語で、また『ナイチンゲールの沈黙』や『医学のたまご』とのつながりが容易に想像できる物語で、既読者にはいつも通りのシリーズとしての面白さを体験させてくれると思う。
 既読者としての感想をまず書くと、今まで通り作品間クロスオーバーが数多くなされ、 この時代の東城大学、曾根崎家などが描写されているのが嬉しい。その描写には更に先の作品を予感させるものがありいつも通りわくわくさせられた。そんなふうに既読者にとっ ての海堂尊作品の面白さというのはいつもどおりだという印象を受けた。
 次にこの作品単独での感想を述べると、まず話のテーマがコールドスリープの話なので、自然、SF的な印象を受けた。特にセンターのイメージが非常に未来的で、モルフェウスの涼子からの描写が幻想的なため、前半はとても異色な感じがした。そこから闖入者が現れ、涼子がセンターの外へと出たところから話がガラリと変わる。そこからモルフェウスの目覚め、覚醒、そしてラストまでトントン拍子に話が進み、さらっと読み終えてしまった。この飲み口爽やかさとそれに対する物語の堅実さがいつも通り面白かった。
 今回はそこまで現実世界の官僚や医療、メディアへの批判が薄口で、コールドスリープ を現実世界で成立させるための法制度や理論など、比較的SF的な題材と思われる部分が多かったため、新鮮で面白かった。雰囲気も幻想的で、描写も堅実に上手い。話としては特に起承転結が強いわけではなく、物語が特に動いたわけでもない、既刊でいうならば『ジーンワルツ』のような、ラストの衝撃が強い作品だと思う。
xxxLuna さん (20代女性 学生)
 さすが海堂尊さん…。物語の中へとどんどん引き込まれていきます。登場人物もみんな魅力的で、展開されるストーリーは読者を飽きさせません。医療という領域は、一般人にとってはなかなか踏み込むことのできない高貴なもの。しかし、私たちにとっても”知らない”で済むことではありません。自分の命を守るためにも、医療の可能性も不確実さもきちんと認識しなければならない。海堂さんの本は、私たちに医療と向き合う第一歩を踏み出すきっかけを与えてくれると思います。
 今回の『モルフェウスの領域』は、凍眠という新概念の誕生によって振り回され、人生を大きく変える人々が描かれています。凍眠は、医療の可能性を広げる画期的な技術ではありますが、新しいものは受け入れられるまでに時間がかかる。本当に守るべきは、医療の進歩かはたまた人の権利か…。今回の本で海堂さんが私たちに突きつける命題は、とても重く、医療がどんどん発展してゆく現代において、誰もが心に留めておかなければならないものだと思います。そしてその命題を考え続けると同時に、国や人が動いて人の命を最優先する仕組みをきちんと創出しなければならない。最も尊重すべきは人の命であり、自己の利益ではないということを認識できている人が、この日本にはいったいどれだけいるのでしょうか。さまざまなことを考えさせられる、とても面白い本だったと思います。
まりも さん (40代女性 主婦)
 ――モルフェウスとは眠りを司る神である――
 右眼を失い、残された左眼を守るため、たった1人で5年間眠り続ける9歳の少年。親もいない彼を守るため、涼子は奮闘する。
しかし彼の目覚めは、涼子と彼の2人だけの王国の崩壊の時だ。
 彼の眠りと目覚めをただ1人で見守り、そして目覚めた彼の将来すら守ろうと、涼子の下した決断。
 人はだれかのためにここまですべてを投げうつことができるのだろうか。
 それはあの時、ちいさなわがままのために、“彼女”を死に導いてしまった涼子の贖罪だったのかもしれない。
渡辺香涼 さん (30代女性 会社員)
 海堂さんの本を読んでいるといつも、これはフィクションなのかノンフィクションなのかが分からなくなってくる。今度も、もしかしたらコールドスリープがどこかで実際に行われているのではないかと本気で考えてしまうくらい物語の中に引き込まれた。
 もしもコールドスリープが実在して、自分が5年間の眠りを選択しなければならない立場に置かれたとしたら、私は一体どんな決断をするだろう。また、スリーパーの管理をする立場に置かれたとしたらどうだろう。そんな風に考えながら、モルフェウスと彼の守護天使、そして彼らを取り巻く人々の物語を、夢中で読んだ。
なっちゃん さん (20代女性 学生)
 ストーリーが面白いだけではなく、登場するキャラクター一人一人がものすごく魅力的でドキドキする。看護師を目指しており、次の春には実際に病棟に出る予定の私としては、こんな風になりたいとか、こんな人が周りにいたら良いのに、と思うような人たちばかり。私もいつか、猫田さんや翔子さんのようなナースになれたらいいなと思う。
 東城大学のロマンスグレイや愚痴外来、チュッパチャプスに廊下トンビなど懐かしい単語や人々がたくさん登場して、チームバチスタシリーズのファンとしては思わずニヤリとしてしまう場面が盛りだくさんなのも嬉しかった。
 最後の涼子さんの決断にはとても驚かされた。5年後の彼女たちがどのようになっているのか、とても気になる。モルフェウスも彼の守護天使も、幸せになってくれていたら良いと思う。
みきやん さん (30代女性 主婦)
 読み始めてすぐ、地下室の資料の中の涼子がすんなり想像でき、物語に入り込めました。「コールドスリープ」という凍結して医療の進歩を待ち続けるという、ありそうでまだ実際にはない事案を海堂さんならではの医療知識でリアリティを持ち続けて読み進めることができました。海堂作品ならではの、田口、高階院長、如月翔子などおなじみの登場人物を楽しむこともできました。
 涼子は一見するところ、何も武器を持たないまま死神・西野や曽根崎伸一郎に挑んでいるようですが、海堂作品の女性で弱かった例は無いように思います。涼子もそうでした。海堂作品の女性は必ず強く、最後に驚くことをします。涼子もただ地下室にこもっているだけではなく切り札を用意していたんですね。5年後彼女はどう現れるのでしょうね。楽しみです。
ぐらんま さん (30代女性 会社員)
 SFでは当たり前のように出てくるコールドスリープをリアルに考えるとこうなってしまうのだろうか。病気を治したい、そのために時を止めて眠る。実現されれば生死にかかわる病気を患っている人にとっては喜ばしく、夢と希望のある物語ですが、いざ行われるとなると『凍眠八則』に言われるような問題が。コールドスリープから目覚めても今までの‘自分’で生きていくのだと思っていたので、この4項は目から鱗でした。
 私がこの立場ならどちらを選ぶか、究極すぎて答えがでません。アツシはどちらを選ぶのか、先が気になりここから先は一気に読んでしましましたが、このあと涼子はどうなるのか、話の続きがとても気になりました。
逃亡兵 さん (30代女性 主婦)
 読み終わった後で胸が苦しくなった。輪廻のように絡まり合う涼子とモルフェウスの関係、そして涼子に強く影響を与え揺さぶりをかけた西野や異国の事務次官。かつてのオレンジの将軍の声を今も心の何処かで聞いている佐藤先生や翔子ちゃんといい、この作品では皆が何かに囚われている気がする。過去や誰かの残像を引き摺りながら今を生きている。あちらこちらに見え隠れする各々の記憶の残り香がとても切ない。空虚なシステムに囚われて独りになろうとしているモルフェウス。彼を守ろうとする涼子が出した結論。虚像と化した「コールドスリープ」の前に立ちはだかるのは「感情」という一筋の光なのだと思う。それは時に人を惑わせ苦しみや悲しみに変わることもあるけれど、その根底に宿る温もりが最後の最後で救いになった気がして嬉しい。
 心が揺れながらも「モルフェウスを守りたい」と凛とした意思を持ち続けた涼子さんがかっこいい。曽根崎先生といい、海堂ワールドの女性たちは強くて素敵だなぁ。ぐだぐだ官僚に斬り込んでいく海堂節も健在でした。
 桜宮サーガ好きにはたまらない沢山の名前が出てきて大満足です!まさかあの人が!この人の名前が!と驚くこと請け合い。
 極北の速水先生へ! あの苦労性の佐藤先生は逞しく頑張っておりますよ!
ぴょこ さん (20代女性 会社員)
 モルフェウスも海堂ワールドの一部を切り取った作品で、他の作品との登場人物のリンクもあってまた話が一つ繋がった気分。ただいつも以上に登場人物の心情が理想と現実の間で揺れ動いていてぐいぐい引き込まれていった。
 コールドスリープという未認可の新しい医療技術が現実社会にどのような影響をもたらすのか分かりやすく解説されていて、小説だけど医学の知識もget+ぷち恋愛小説を読んだ満足感がある。
さん (20代女性 会社員)
 まずは、いつも海堂さんの作品を読む度に思うのですが、上手い!の一言。『ジェネラル・ルージュの伝説』文庫版で、海堂さん自身の作品解説を読んでいて、『モルフェウスの領域』は辻褄合わせのために書いたもの・・・という認識があったのですが、もう何処が辻褄合わせなんだってくらい世界観が相変わらず統一されていて素晴らしかったです。
 初めて読む方にはもちろん、桜宮サーガシリーズが好きな方には、桜宮サーガに登場するキャラクター達が各所に登場するので1冊にして2度美味しい・・・そんなお話になっています。速水先生がとにかく好きな私には、名前こそ出なかったけど、速水先生のことを云っているんだなという箇所があるたびにたまらなくなってしまいました。他にも、翔子ちゃんとアツシ君の関係性が変わっていなくて良かったなぁとか、翔子ちゃんは本当にひかりの女神って表現がピッタリだなぁとか、佐藤ちゃんの駄洒落の進化無さがたまらなく愛しかったり、田口先生は高階病院長に相変わらず上手く使われているんだなぁとか、もうそれはそれはたまらないことだらけです。
 内容の感想としましては、涼子さんのモルフェウスへの愛が計り知れないです。曽根崎先生vs涼子の対決も、全てはモルフェウスのためで、何倍も上手の相手に喧嘩を売るのはやろうと思っても中々できないことですし、最後には「スリーパーをひとりぼっちにしてはならない」という曽根崎先生のヒントを基に、自分自身で答えを見つけ、あんな決断するなんて・・・他人の為に貴方は何処までできますか?そんな問いを投げつけられたような気がしました。
 また、コールドスリープという技術が今の現代社会で可能になったらと考えますと、例え曽根崎理論のようなものがあったとしても、可決されることは難しいのではないかと、今の社会の決定力の無さに唸るばかりです。西野さんと涼子さんのやりとりもすごく好きです。
はな さん (20代女性 公務員)
 静かに流れていく時間は私にはきっと耐えられない。でも、涼子はそんな流れの中でずっと生きてきたんだなと思った。私とは全然違う主人公の気持ちの強さが印象に残った。
 登場人物がいつもの人たちになったとき、なぜか安心してしまった。きっと涼子は救われると思った。私の中で、社会と同じで病院の中にも、信用できる人とできない人がいるような気がするのは、海堂作品を読むようになってからできたトラウマ(?)だと思うから。
 読み終わって3日たちますが、もう一回読み返そう!と思ってきました。それはきっと、物語にあるいろんなトラップをきちんと整理しながら理解したいからだと思います。あ〜ぁ面白かった。
春生 さん (20代女性 専門職)
 小学生の頃、来るべき二十一世紀の未来に夢を見ていたことがある。
 一つは空を飛ぶ車。
 地べたを我が物顔で駆け回り騒音と二酸化炭素をまき散らすそれがふわふわと宙に浮かび、泳ぐように空を行き交うのである。そう、映画『フィフス・エレメント』のような社会を、私は当時夢に描いていた。
 そしてもう一つ。
 それがコールドスリープだ。
 人は透明なカプセル状の装置の中で深い眠りにつき、数十年後の未来で目覚め、そこで過去では受けられなかった様々な恩恵を受けるのだ。いや、受けるのは恩恵ばかりではない。時代を超えてしまった対価とでもいうべき孤独や苦悩も、そこには待ち受けている。
 これは以前はSFの一般的な手法だったが、最近はとんとお目に掛からない。SFの手法としては使い古された感があり、飽きられてしまったということだろうか。
 そうして迎えた二十一世紀。
 ふと立ち止まって周りを見てみる。
 そして気付く。小学生だった私の描いた未来には、どうやらまだ到来していないことに。
 騒音と二酸化炭素をまき散らすという点はハイブリッドカーなどの開発によりあの頃から随分と進化したものだが、車は相変わらず地べたを走っているし、コールドスリープなど、相変わらずSF映画の中だけの存在ではないか。
 これは一体どうしたことだろう。
 なんて疑問に首を捻ることもなく二十一世紀をのらりくらりと生きていた私は、ある日一つの作品に出会った。
 それが『モルフェウスの領域』だ。
 空飛ぶ車はさておき、何やらこの作品、コールドスリープについて描かれているようだぞ。
 しかもSFではない、医療モノじゃないか。
 しかも作者はあの海堂尊先生!
 かくして、元々著者の熱烈なファンである私は、二〇〇九年一月号に『モルフェウスの領域』が読み切り短編として掲載された時から、この作品にすっかり惚れ込んでしまったのである。
 当初は読み切りだと思っていたら、まさかの連載!しかもこうして単行本になるなんてと、嬉しい悲鳴を上げてしまった。

 物語の主人公は日比野涼子という、これまでの桜宮サーガシリーズには登場しない新しい人物。
 その彼女が、同シリーズではおなじみの"オレンジの爆弾娘"こと如月翔子をはじめ、高階病院長や愚痴外来の田口、准教授にまでなった佐藤ちゃん、そしてあの佐々木アツシと共に、コールドスリープという一見SFの物語を綴っていく。
 桜宮サーガマニアとしては馴染みの名前や施設(例えばオレンジ新棟やエーアイセンター)が出てくるだけでも嬉しいのだが、最初に何より嬉しかったのが、某飲んだくれ医務官の再登場だった。最後までその名前こそ明かされないが、彼が"あの人"である事はファンなら一目 瞭然。
 あまりにも"らしい"彼のその後に、思わず胸が熱くなったのを覚えている。
 海堂作品の大きな魅力はこのキャラクターのリンクだと思うのだが、それにしても一度も名前を出さない再登場のやり方には正直ヤラレたという感じだ。
 涼子は、その彼からノルガ共和国という異国で、原始的だが血の通った医療を学ぶ。
 実はこれがキモで、医療のイロハを医務官から教わって育った彼女は、コールドスリープという自らが接する最先端の医療を「どこか遠い世界のできごと」だと感じているのだ。
 そう、主人公でさえ、コールドスリープを「どこか遠い世界のできごと」と感じてしまう。
 そうか、やはりコールドスリープはSFの夢物語なのか……。
 物語の序盤でそう思わされるものの、そこは海堂尊。読み終えて感じるのは、「コールドスリープはSFの世界の話じゃない、現実だ!」ということだから驚きだ。
 もう一つ、著者の作品の大きな魅力だと思っているのが、理想と現実のバランス感覚というもの。
 現場の人間の中からしか生まれないであろう医療の理想を軸に据えながら、一方でガツンと現実を突きつける。逆を言えば、惨状とも言える医療現場の現実を描きながら、著者の理想の医療を物語の中で描いているのだ。
 傑作(だと思っている)『ジェネラル・ルージュの凱旋』然り、『ジーン・ワルツ』然り。
このバランス感覚があるからこそ、コールドスリープを取り扱ったこの作品が単なるSFに留まらず、しっかりとした医療モノになっているのだと思う。
 ただ一点、これまでの著者の作品とはちょっと違うと感じるのは、どこか詩的で抽象的な物語だという印象を受けることだ。それこそモルフェウス・システムのメディウムの中をたゆたっているかのような感覚。
 そういう意味では、限りなくSFに近い医療モノとも言えるのかもしれない。

 余談だが、私は著者の描く女性陣が非常に好きである。
 男性作家の中には、女性の立場から見て思わず「おいおい、それはないだろう」と突っ込みたくなるような稚拙な女性の描写が多かったりするのだが、著者の作品にはそれがない。
 むしろ同性から見て憧れ、惚れ込んでしまうような女性キャラが非常に多い。
 今作の主人公・涼子もそうであるし、カウンターパートナー・翔子もそうだ。チラッと登場する猫田総師長など、シリーズの中でもベスト3に入ってしまうくらいお気に入りのキャラだったりする。
 女性陣に翻弄される男ども(しかも極めて優秀!)を見ているのは、中々に爽快だ。

 さて、その涼子。
 彼女が最期に選んだ行動に、思わず目の奥が熱くなった。涼子の選択には、当事者たるアツシだけではなく、第三者たる読者もきっと涙するに違いない。
 涼子とアツシ。
 二人の運命は、この『モルフェウスの領域』が作品として終わると同時に始まった。是非ともこの続編を読んでみたいと思う。
 さらに言えば、救命救急センター亡き後、総合外科統御学教室に拾われた佐藤ちゃんや、涼子を支え続けた曾根崎伸一郎の話も見てみたいし、ノルガ共和国で飲んだくれている医務官と涼子の再会も見てみたい。
 メインストリームではない脇役達にまでいちいちドキドキされられてしまう。これだから桜宮サーガから抜け出せない。
 小学生の頃に夢見た世界が、少なくともこの作品の中には存在している。
 法整備、人権問題、何よりそもそもの技術開発など問題は山積みであるにしても、コールドスリープという一種人類の夢をこの作品は見せてくれる。しかも、限りなく現実に近い夢を。
 未来の世界に、自分の命と希望を託す――。
 医療に素人のイチ読者感想として、願わくばいつの日かそんな世界が訪れることを。
 最後に、モルフェウス・システムを開発してくれたヒプノス社に一言。
 "凍眠を永遠に続けたい方には葬儀会社のアドレスを。目覚めたい方にはヒプノス社のコールナンバーを"
 私なら、迷わずコールナンバーをお聞きしたい。
あず さん (20代女性 主婦)
 これぞ私の大好きな海堂先生の作品、と言いますか、桜宮サーガとはこういうものだという圧倒的な何かを見せつけられたように思います。
 そこそこに過去の作品を読んでいるのもあり、場面場面に散りばめられた、シリーズの登場人物の影を追うのもまた、一つの楽しみになってきました。
 もちろん今作で初めて海堂先生の作品に触れる方にもお薦めしたい一冊だと思います。

 今作も現代の医療問題を絡めた本シリーズだからこそのリアリティが生きています。
 果たしてこれは未来の作り話なのか、それとも現実のすぐ隣にまで迫った問題なのか。
 もともとそういう問題に疎く、興味も薄かった社会から少し離れた場所にいる、子育て世代の主婦である私にも考えさせられる話でした。

 登場人物のそれぞれが、それぞれにしか出来ない役割りを担い、モルフェウスを支えて行く姿はまるで家族のようにも見えました。
 モルフェウスを守るために、孤独に戦う涼子の姿は母の様であり、母のそれとは違う。
 けれどどこかそれ以上の存在のような涼子が、最後どんな選択をするのか。
 スリーパーをひとりぼっちにしてはならない。
 ……この言葉に総てが帰結するラストは衝撃的だけれど、納得の一言です。
 母の胎内のようなその装置の中で与えられた記憶。
 それが救いになるような気がして……。
 このラストのおかげで最後の最後までどこか暖かい気持ちで読むことが出来ました。

 これを遠い未来の話と読むか、近い将来の話と読むか。
 どの登場人物に感情を預けて読むか……全ては読み手次第。
 けれど読み終わったときに知識だけでなく、何か心に訴えかけるものがある。
 それはただの医療ミステリーではない。
 また近いうちに桜宮の住人たちに会えますように、そんなことを願って止まない作品でした。
はち さん (20代女性 その他)
 この作品を読んだ後に、他の作品を読み返したくなりました。
 各作品に点在する足跡を、ひとつずつ追いかけ、ときに追い越し、世界は常に螺旋で繋がり、複雑に絡み合っているのだと感じました。
punica さん (20代女性 会社員)
 無機質な化学の言葉がふんだんに用いられながらも、人の温かさが思いがけない形となって交差する優しい恋物語でした。
 主人公である日々野涼子さんの「モルフェウス」への無心でひたむきな献身は、恋愛においてワガママになりがちな私へ、大切な人をもっと大切にしなくてはだめよ、と優しく励まされたように思い、なんでしょう、目覚めさせられたように感じました。