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運命の書(下)

運命の書(上・下)ブラッド・メルツァー 越前敏弥=訳

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フリーメイソンの起源についてはさまざまな説がある。それらの中で主要なものを紹介しよう。

(1)中世石工職人組合(ギルド)起源説
中世におけるキリスト教の大聖堂、修道院、宮殿などの建築や修復は、長期間にわたることが多く、その作業は親方(マスター)の指揮のもとで、建築家や職人のギルドによってなされた。 ギルドの職人たちの集会所は「ロッジ」と呼ばれ、作業に必要な書類の保管場所であるとともに、職業上の秘密を伝達する儀礼の場としても使用された。 フリーメイソンは、この中世の石工職人組合(ギルド)に起源を持つという説である。多くのフリーメイソン史の研究者がこの説を支持している。 「ロッジ」という言葉は、13世紀頃登場し、「フリーメイソン」という言葉は14世紀頃から使われるようになる。

(2)聖堂(テンプル)騎士団起源説
聖堂(テンプル)騎士団は、1118年聖地エルサレムへ向かう巡礼者の保護を目的として結成され、貴族だけでなくさまざまな階層からなる巨大な組織に発展し、貿易・金融業等で莫大な富と権力を有するようになった。 しかし14世紀の初め、その資産を狙ったフランス王フィリップ4世の陰謀により壊滅状態に追い込まれ、残党はスコットランドに逃れた。 この残党(騎士)が再編した組織がフリーメイソンの起源であるという説である。この説は、フリーメイソンに貴族性を求めようとする人々によって支持されることとなった。

(3)「ソロモン神殿」建築家起源説
「ソロモン神殿」は、紀元前にエルサレムに存在したユダヤ教の礼拝の中心地で、古代ユダヤ民族の統合を象徴している。 建築にあたり建築家棟梁ヒラム・アビフが、職人たちを「親方」「職人」「徒弟」に組織し、それぞれに秘密の合言葉や符丁などを用いさせるなどの工夫をして、完成させた。 フリーメイソンは、このとき組織された職人集団を起源とするという説である。この説はフリーメイソン自身が主張している。

その他にも、古代世界における密儀宗教を起源とする説、ローマ帝国滅亡後に石造建築技術を維持したローマ建築職人を起源とする説、17世紀初頭のヨーロッパに姿を見せた薔薇十字団を起源とする説など、数多の起源説が存在する。

起源がどうあれ、近代フリーメイソンの発足は1717年6月24日、ロンドンの居酒屋「グース・アンド・グリドアイアン」にてグランド・ロッジが結成されたことに由来する。 このときまでは、フリーメイソンもロンドンに数多くある「クラブ」のひとつに過ぎなかった。しかしグランド・ロッジ結成を転機として、宴会だけを目的とする集まりから、思想的な面を打ち出す集団へと大きく変化していく。やがてグランド・ロッジは、フリーメイソンの歴史・規約・目的に関する憲章作成に着手し、1723年、ジェームズ・アンダーソンにより「フリーメイソン憲章」が制定された。

参考文献 吉村正和『フリーメイソン 西欧神秘主義の変容』(1989年、講談社現代新書)