アナンシの血脈 上
[著者]ニール・ゲイマン
何をやっても冴えないチャーリーは、父親の葬儀の日に衝撃の事実を告げられる。父は神だったというのだ。ある日スパイダーという名のきょうだいが現れて……。ありえない現実と真に迫る幻想が交錯するベストセラー!
アナンシの血脈 下
[著者]ニール・ゲイマン
正反対のきょうだいに婚約者を寝取られ、仕事もだめにされ、横領の濡れ衣まで着せられたチャーリーが交わしたある契約。そこには大きな罠が隠されていた。世界19カ国で大ヒットを記録した作品がついに文庫化!
神は死んだ――。息子たちはどうした?!
何をやってもどんくさくて冴えない青年チャーリー(通称:ファット(でぶの)・チャーリー)は、父親の葬儀の日に衝撃の事実を知らされる。父はアナンシと呼ばれる神だったというのだ?!更にある日、その神の血を色濃く受け継ぐスパイダーという名のきょうだいが突然現れて、チャーリーの人生はむちゃくちゃになりはじめる。恰好いいスパイダーに婚約者を寝取られるし、会社から閉め出されるし、挙げ句のはてには警察に追われることに…!
一方、殺人事件を追って南の島に飛んだ女刑事とチャーリーの元婚約者、そしてその母まで巻き込んで最悪の事態が発生。ダメ男チャーリーに残された唯一の手段は……?!
西アフリカの神話に出てくるクモ。多くの動物物語に登場する。
アナンシと呼ばれた「父」について・・登場人物は語る・・チャーリー「父さんが誰かをかつごうと思ったら、それまでさ。あれほどのウソつきはまずいない」・・「父親の最低ぶりを表すとしたら、ずばり、恥ずかしい、の一言につきる」・・
チャーリーの婚約者ロージー「お父さん、茶目っ気のある、とても素敵なかたみたい!結婚式には、ぜひともきてもらわなくちゃ」チャーリー「絶対にいやだ。絶対に絶対にいやだ。はっきりいって、絶対に絶対に絶対にいやだ」・・
チャーリーと父親をおいて出て行ったチャーリーの母親「悪い人じゃないのよ。そうともいいきれないわね。いい人じゃないもの。でも、父さん、素敵な力を母さんにくれたの」・・
チャーリーを見守る老女たち「あの笑顔をみたら、女ならつい、きゅっと爪先に力が入っちまうんだよ。それに、着こなしだって最高だった。女なら夢中にならずにはいられないような人だったよ」・・
あるとき、アナンシのおばあさんが死にました。
家から遠く離れたところで亡くなったので、アナンシは、手押し車を押して島を横断し、遺体をのせて帰路につきました。
町を通りかかりました。アナンシはここいらでウィスキーでも飲みたいなと思って、店に入りました。
そこはせっかちな男が店主をしていました。アナンシは、こいつをちょっとからかってやろう、と思いました。
「うちのばあさんにもウィスキーをもっていってくれないか」
店主はウィスキーのボトルを手に手押し車のところまでいくと、「こんちは、ウィスキーをもってきたよ」
けれど、返事がありません。店主はだんだん腹が立って言いました「起きろ、ばばあ。ウィスキーを飲めってんだ」
今度は返事がないうえに、暑いとき死人がやること=ぶぶっとおならをしたのです。
かっとなった店主はおばあさんを殴りつけました。三度目のとき、おばあさんが手押し車から転がり落ちました。
アナンシが泣き、叫び、騒ぎはじめました。「なんてことしてくれたんだ!人殺し!悪党!」
そこで、店主はウィスキーを5本、金を一袋、バナナ、パイナップル、マンゴーを詰めた袋をアナンシに渡したのです。
翌日、トラがごちそうに舌鼓をうっているアナンシをみつけました。「おいきょうだい、こんなごちそう、どこで手に入れたんだ」
そこでアナンシは言いました。「死んだばあさんを手押し車にのせて、町に連れて行ったらこれを全部、あそこの店の主人がくれたんだ」
そこで、トラは妻の母を殺し、手押し車に乗せて町まで連れていき、こう叫びました「死んだばばあが欲しいやつはいないか?」
人々は、野次り、笑い、バカにしました。トラが大マジメで立ち去らないことがわかると、今度は腐った果物を投げつけました。
それでトラもようやく逃げ出したのです。
トラがアナンシにだまされたのは、これが最初でも最後でもありません。
トラの妻は母親を殺されたことをうらみ、いつまでもくどくどと責め立てました―。
(本書より一部抜粋)
★『グッド・オーメンズ』(2007年3月刊行予定)
名作ホラー映画「オーメン」を下敷きに、〈反キリスト〉の使命を帯びた赤ん坊をめぐる天使と悪魔の攻防を描くジェット・コースター・サスペンス!
★『アメリカン・ゴッド』(2007年夏刊行予定)
アメリカには、今も北欧神話の神々を始め多くの神が正体を隠してひっそり生活しているという。ゲイマンらしいウィットに富んだファンタジックストーリー。
★『スターダスト』(2007年秋刊行予定)
ミシェル・ファイファー&ロバート・デ・ニーロ主演で映画化決定!愛する女性のために旅を続ける青年の成長を描く、ちょっと不思議でロマンチックな恋愛小説。
イギリス生まれ。アメリカンコミック『サンドマン』の原作者としてあまりに有名。世界幻想文学大賞、ヒューゴー賞、ブラム・ストーカー賞など数々の文学賞を総なめにする、今、最も注目される作家。著書に『コララインとボタンの魔女』『グッド・オーメンズ』『アメリカン・ゴッド』など多数。
■ニール・ゲイマン ウエブ・サイト
http://www.neilgaiman.com/
■かねはら・みずひと
岡山市生まれ。法政大学教授。翻訳家。海外作品の紹介者として不動の人気を誇る。主な訳書にミッチ・カリン『タイドランド』をはじめ多数。本作品について、氏は「こんなに面白い作家は他にはいない。今、この日本に、ゲイマンを紹介できる喜びをかみしめている」と述べている。


