こんにちは。「エクスプローラー」シリーズを書かせて頂いている北山大詩です。
富士ミスサイトのコラムを書いてよと、編集さんから依頼されたのですが、テーマも無しでは何を書けばいいのか見当も付かない。デビューして生活が変わったこととか書いてみたらと言われたので、受賞が決まってからこの半年のことをちょっと振り返ってみました。
……が、あまり生活が変わったという気がしません。今年1月にデビュー作が出版されて念願の作家デビューが叶ったわけですが、せっかく作った「北山大詩」用の名刺も未だに使う機会がないし、編集さん以外にこの名前を名乗ったこともありません。というか編集さん相手にも本名で名乗っていることがほとんど。
しかも住んでいるところが田舎なので、近所の本屋は小さ過ぎて富士ミスの文庫は未入荷だったし、デビュー作が出版されたときは続編の執筆でテンパっていた時期で、大きな書店に足を運ぶ余裕すらありませんでした(後日に行ってみたけどもう売ってなかった)。なので、実は未だに自分の書いた本が売ってるところを見たことがなかったりします。
本当に作家になれたのか、イマイチ実感が湧かない。
だけど、そんな僕に作家だったのだということを強く意識させる出来事が……。
なんと友人の彼女が文庫を持参して、サインを書いてくれと言ってきたのです。
サイン……、サイン……、サイン……ああ、なんて魅惑な響き。友人の誰も読んでくれていないという事実に半分腐っていたのですが、途端に舞い上がる自分。
「ああ、サインね、いいよ」
いかにも慣れてますといった感じに受け取ったものの、内心は嬉しさでドキドキ。早速カバーを外して裏表紙にマジックで書き込もうとしたんですが、初めてのサインなのでさすがに緊張して手が震えます。ですがこんなことでビクついていると思われるわけにはいきません。小さく深呼吸して気分を落ち着かせると、一気にマジックを走らせました。
(よしっ、完璧っ!!)
「読み終わったら、感想聞かせてよ」
カバーを掛け直すと、にっこりと微笑みながら友人の彼女に文庫を手渡しました。
「ありがとう!って……これ、本名じゃん」
「へっ?」
(しまったあぁぁぁ!!!)
場が白けた空気に包まれます。友人たちの冷たい視線が痛い。痛すぎる。
ああ、穴があったら入りたい。
やっぱ普段から作家だという意識を持っていないと、なかなか気持ちが切り替わらないようです。
そうだ、誰か先生と呼んでくれないかな。「先生」……ああ、なんて憧れる響き。
……やばい、想像してたら顔がにやけてきた。
よし、まずは未だに読んでくれない友人たちに呼ばせることにしよう。調子に乗るなって蹴っ飛ばされそうだけど。
いまだ作家としての自覚が足りていないような気がする私ですが、今月は続編も出版されます。名実ともに作家と胸を張って言えるように頑張っていきますので、どうぞよろしくお願い致します。
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