スタッフルーム探訪 : 美術監督・山本二三さん(その2)
お待たせしました。久しぶりのスタッフルーム探訪ですよ。
前回から既に1月たってます。8月は他のお知らせがほぼ毎日あったので、後回しにしてしまってましたね。スイマセン!。
実はこのブログも、今週で100エントリー突破。9月もまだまだ頑張りますよ。
スタッフルーム探訪の原画編も、すぐお届けできると思います。
あとは今日イマジカでの研究会にも行ってきましたので、近々紹介できるかな。
今回は、美術監督の山本二三さんの続きです。
ちなみに、前回はこちらの「スタッフルーム探訪 : 美術監督・山本二三さん(その1)」を参照のこと。
実は、この時かけの美術制作にあたって、二三さんは自分のスタジオをスタートさせました。こう書くと大したことない気がしますけど、アニメ業界的には結構大きな事件だと思いましたよ。
二三さんの新会社の名前は「絵映舎」。
時かけの美術が、初めてのメインの仕事だったんでしょうね。とにかく頑張ってましたよ。
こちらはマッドハウス内の背景スタッフルームでの集合写真。

後列の左から順に、美術監督補の橋本和幸さん、二三さん、鮫島潔さん。
牟田いずみさん、中村聡子さん。
美術監督補の増山修さん、渡邊美里さん、岩谷邦子さん。
(↑増山さんと鮫島さんの位置を間違えて書いてましたね。直しました、スイマセン)
中には大学を卒業して、これが初めてのアニメの現場という方もいらっしゃいます。
背景スタッフルームにお邪魔したのは6月の第2週、ちょうど美術制作も追い込みの時期でした。

渡邊さんが描いているのは、ジャイアントスイングが行なわれる高校の中庭です。
真琴の部屋担当とか、博物館担当といった具合に、ある程度のまとまりで割り振られているみたいですね。
担当シーンに応じて、デスクにある資料はみんなガラリと違います。

こちらは美監補の増山さんのデスク。
描いているのは高校の図書館、あの女の子が立っているシーンです。
増山さんは他にも、野球のグランドや回想シーンなどを担当したとのことです。

こちらは鮫島さん。主に河原の夕景を担当されたとのこと。
ラスト間際の、段階を追って色味が変わっていく夕焼けのシーン、あれは彼の仕事です。
この日に描いていたのは、時間の止まったシーケンスのプールのところの美術ですね。
その後、初号直前にもう一度背景スタッフルームにお邪魔しました。
その頃にはもう美術作業は終わり、荷物をまとめているところ。
ちょうどマッドハウスで、フィルムになる直前の全編プレビューがあった日でした。

−全編プレビュー、どうでしたか?
いやー、繋がったのを初めて観たけど、泣きそうでしたよ。隣に座ってた女の子は泣いてたよね。もうちょっと観ていたいって思わせる映画だよ。その意味では良い時間をみんなに与えることができますよ。そういう映画が一番いいんだろうなあ。
−今は作業を終えて、もう荷物をまとめてる状態ですけど、そこにあるベニヤ板の束はパネル貼りに使ったんですか?
紙をベニヤの板に貼り付けていくんですね。キャラクターが繊細なので、線が歪んでいくとつらいんですよ。ちゃんとしたパネルは高いので、ベニヤなんです(笑)。
紙がしなっていると、定規で押さえても膨らんで線が曲がるんでね。写真みたいに、水を張って濡れてる状態で紙を張るとうまくいくんです。
−そこは、なかなか上手い道具はないんですね。
文化の違いで、アメリカではセル絵の具が薄かったんです。アナログの撮影台を使うときは、素材を上からガッと押さえるんですよ。日本の場合は絵の具が分厚いから、背景はこういう薄い紙じゃないと押さえが利かないっていうことがあったんでしょうね。ちゃんと押さえないと、動きが変に見えちゃうんです。背景の下に紙をいくつか敷いて撮るんですよね。
デジタルじゃない頃のトラディショナルな理由なんでしょうね。今はセル画じゃないから、ホントはこんな薄い紙でなくて、アメリカ式のイラストレーションボードに描いてもいいんですけどね。
でも、この薄い紙で描く技術が出来てきてるんで、両面濡らすと感じよく描けるんです。ボケもうまく描けますし。アメリカ式のイラストレーションボードだと水を張ると曲がったりするんですよ。
ーそこにある、沢山の絵筆はやっぱり用途が決まってるんですか?、例えば「二三雲」を描くときはどの筆なんですか? (↓の写真参照)
雲を描くときにはこれ、秘蔵っ子の筆だね。もう5,6年使って、だいぶ丸くなってきてます。たまに若い子に貸してあげたりしてますよ。絵筆はそれぞれが全部違って、目的に応じて描きやすいのがあるからね。
↑こちらが「二三雲」用の筆。金具の部分がもう外れやすくなってます。
−ところで、美術スタッフの方々は、筆とか絵の具の使い方など流派があるものなんですか?
ありますよね。職場によって違いますね。
そこにいる彼、橋本君の師匠は、椋尾篁さんなんですよ。その椋尾さんにもコナンを手伝ってもらったりしたんですよね。椋尾さんの亡くなった歳に、僕もいつの間にか近づいちゃった。
−「未来少年コナン」でも美術監督でしたよね。もう30年近く前ですね。
あれも、僕が若かったしね。「作画はいいけど美術が悪い」って巨匠に言われましたよ。しょうがないですよね、まだ二十四だったもんね。
昔は流派がはっきりしてたんです。椋尾さんと、僕の師匠の伊藤主計さんは、絵が似てるんですよね。もともと油絵だから、絵の具が分厚いんです。
男鹿和雄さんの師匠の小林七郎さんや井岡雅宏さんたちと、大きく2つに流派が分かれてましたね。どちらかといえば、当時の両派は仲も悪かった(笑)。僕らの代になってから、僕が男鹿さんと一緒に仕事したり、椋尾スタジオの人が小林プロの人と仕事したりするようになりましたね。
−ちなみに絵映舎のみなさんは、どういった経緯で入社されてるんですか?
絵映舎のみんなは、学生の頃からアルバイトとして来てたりしてるんです。「卒業するまでやってみたら?」って。そしたら自分が向いているかどうか確認できるじゃない。
今の若い人は、昔と違って雑誌など色んな情報がありますよね。きちんと日本画や油絵、デザインなんかをやってからでもいいんじゃないかって思いますよ。最近はちゃんと大学で勉強してきてる人が多いですよ。
−昔はそうでもなかったんですか?
僕らより以前の世代は美大・芸大を出てた人が多かったけど、僕らの世代はそうでもなかった気がしますよ。いきなりスタジオに入ったりとか、もともと油絵を描いてた人とか。色々ミックスされてたと思います。

↑二三さんのデスク、イスに座って見える正面の視界。
取材の後に、撮影に向けて追い込み中のBG素材を見せてもらいました。
ついでにその場でちょっとBG素材を撮影。クリックで大きくなりますよ。

↑原画のアタリをとるための、レイアウト作監修です。コメントが結構面白いです。

↑撮影に回る背景画です。
もう本当にピリピリした状況の中(写真を撮ったのは6月20日!)、どうもお騒がせしました...
山本二三さんと絵映舎の、次の参加作品も非常に楽しみですね。
お体に気をつけて頑張ってください。
